本日ここに、令和七年第二回富士河口湖町議会定例会の開会にあたり、今後の町政運営に対する所信の一端を申し上げさせていただくとともに、本定例会に提出いたしました案件の主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げ、議員各位並びに町民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げたいと存じます
さて、今年度当初に、米国の政権が発動するとした「相互関税」と呼ぶ関税措置については、各国は対抗措置を示すなど反応は違いましたが、世界中に大きな影響を与えたところです。この「関税ショック」により米国市場でも株価は乱高下し、金融市場は大幅に動揺したところです。四月七日には日本でも株価が急落し、史上至上三番目に多い下げ幅となりましたが、翌日には急反発し、その週の上げ幅は過去二番目の大きさとなり大揺れとなりました。
こうした世界の金融市場の動向から、日本などに対しては、追加の「相互関税」は九十日間の停止が示され、さらに互いの関税応酬の様相を示していた米中間でも一部が停止されることになり、最悪の状況は回避されたところです。日本でも、関税措置については遺憾と伝え、見直しを申し入れていますが、場当たり的に税率が変更になるなど動きが読めない不安定な状況にあります。
米政権が仕掛けたいわゆる貿易戦争ともいえる関税の応酬合戦の行方はいまだ見えないだけに、貿易摩擦の激化は世界的な景気後退につながるとの警戒感もぬぐい切れない状況にあると考えています。
さて、このような世界の分断への懸念が高まる中、政府は万博を通じ、次世代に平和や協調のメッセージを伝えたいと考えているようです。大阪・関西万博が四月十三日、大阪市の人工島「夢洲ゆめしま」で開幕しました。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、十月十三日まで百八十四日間の開催期間で、最新技術や独自の文化、そして持続可能な開発目標(SDGs)に向けた解決策などを世界に発信する機会となっています。国内の万博では過去最多となる百五十八の国・地域がパビリオンを出展し、来場者数は推計二千八百二十万人。経済波及効果は二兆九千億円に上ると見込まれ、インバウンドの増加も期待されるところであります。
大きな国だけでなく、名前や存在を知っていても あまりなじみない国など、その国がどんな文化を持っているのか興味深いものがあります。ひとつひとつの展示からその国の歴史や誇り、想いが伝わってくることと思います。パスポートのいらない世界旅行は、またとない体験となるのではないでしょうか。
開会式では、司会を三次元コンピューターグラフィックスによる人間そっくりの「バーチャルヒューマン」が担当し、民謡や歌舞伎、あるいは相撲といった日本の伝統と創作ダンスやラッパーによる演出、ストリートダンスなどを融合させた華やかなパフォーマンスが繰り広げられました。過去の伝統から現代へみゃくみゃくとつづく芸能や表現の新たな融合が印象的でありました。そして開幕には、会場を包みこむような形で建設された一周およそ二キロの世界最大の木造建築「大屋根リング」の上で、およそ一万人の合唱団がベートーヴェンの交響曲第九番を歌い、荘厳な演出で来場者を迎え入れていました。
特別町民であり、世界的な指揮者の佐渡裕さんによる指揮で行われたこの演奏には、当町からの合唱団も参加していたところであります。次回の佐渡裕さん指揮の全国公募型合唱団による演奏会は八月二十四日(日)に河口湖ステラシアターで行われ、富士山河口湖音楽祭を真夏の第九演奏会で盛りあげていただくことになっております。佐渡裕さんを再びお迎えする富士山河口湖音楽祭は特別プログラムを多数用意してございます。町民の皆様には是非身近で感動を体感していただききたいと思っております。
また、万博では日替わりで参加国・地域が自国文化をアピールするナショナルデーが設定されていて、これに沿って各国首相らが来日しています。
世界各国の国王や大統領、首相らを迎える迎賓館では、県内工場で製造されたおしぼりが提供され、暑さ対策として賓客に手渡されています。おしぼりには、当町で栽培されたラベンダーから抽出したオイルを使い作られました「河口湖産ラベンダーの香りおしぼり(ふじぴょん)」が提供されるとのことであります。世界の方々におもてなしツールとしておしぼり文化と捨てられてしまうラベンダーを再生する商品の紹介は町の良いPRになることと期待しているところであります。
この町のマスコットキャラクターのふじぴょんですが、いま、インバウンドなど町を訪れる方々に熱い人気となっています。この一月から町内の自動販売機でぬいぐるみを手に入れることができるのですが、大変好評で多くの方にお求め頂いております。他に類のない珍しい自動販売機を探して町を訪れていただく方も多いことから、今後、冷たいおしぼりと一緒に提供できるよう、商品開発も検討していきたいと考えているところであります。
さて、スマートフォンは、今や生活必需品となっているといってもよいのではないでしょうか。仕事や買い物あるいはレジャーなど暮らしのあらゆる局面に使われています。万博でも公式アプリによる予約や決済など苦戦しながらも、スマホを片手に楽しんでいる様子がうかがえます。
国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化における長期展望は、クラウドといったデジタルサービスの海外への支払いに伴うデジタル赤字が、次第に膨れ上がる傾向にあります。
一方、訪日客の消費額から日本人が海外で使った金額を引いた旅行収支はコロナ禍以降の来日客の回復を受け、顕著に黒字化し、デジタル赤字を取り返せる規模に拡大しています。
政府によりますと、この三月に日本を訪れた外国人客が推計三百四十九万七千六百人で、一月からの累計で一千五十三万七千三百人となり、最速で一千万人を超え、訪日客が宿泊や買い物に消費した額も一月から三月分として過去最高だったとの発表であります。
また、県が発表した二月の宿泊旅行統計調査では、延べ宿泊者数は前年同期比二十三%増で全国一位の伸び率を記録したところあり、町でも引き続き観光需要は好調であると考えています。
町では、こうした観光需要が伸びる中、およそ一昨年前から始まった河口湖駅前の、いわゆる「コンビニ富士山」の撮影スポットにおけるごみのポイ捨てや住宅地への立ち入りあるいは交通ルール違反など観光公害とも呼べる状況に、柵の設置、多言語でのマナー啓発、横断歩道の認知対策、誘導員の配置、QRコードによる観光スポットへの誘導など対策を行ってまいりました。その中でも幕については、外国人観光客のマナー違反対策として大きな決断を行ったところであります。国内外にアピールしたことで、SNSで拡散され、外国人観光客が自らマナーを守ろうとする意識変容が表れており「地域との共存を考える中で重要な例」と評されています。しかしながら、大石公園周辺への観光客の集中など地域への負荷は高い状況にあります。町としては、依然対策が必要な状態にありますので、駅前の交通渋滞については、地域交通や道路整備計画など関係機関等と協働し、その緩和に取り組むところであります。
また、大石公園周辺については、駐車場の確保やトイレの増設、公園周辺機能の修景などに取り組むところであります。町全体としては、西部地域へ誘客を促すような仕組み作りやイベントの分散化が他の観光スポットへの分散化へつながるものと考えております。
今年度の蔵出しワインバーにつきましては、こうした状況化で、五月三日から三日間、植栽など景観を整えた大池公園で開催時期や装いも新たに開催しました。多くの方が地場産の料理に合わせ県産ワインを楽しみ、湖の豊かな自然の中で聴く軽快な音楽とともに優雅な時を過ごしていました。新緑の公園に夕陽に染まる富士山が映え、夕刻には花火でさらに色を添えた演出は、新たな風物詩となっていくものと期待しております。
さて、当町の最大の魅力は豊かな自然であります。その自然の中で、世界最高峰オーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の夏の恒例イベント「ヴァルトビューネ野外コンサート」が、ドイツ国外から世界初となる引っ越し公演として、河口湖ステラシアターにおいて開催されます。
河口湖ステラシアターは、古代ローマ劇場やギリシャ円形劇場をイメージして建設された、富士山を背景に優れた音響を有する野外劇場であります。ヴァルトビューネより小さいですが、現地とそっくりの環境と雰囲気の中、今公演が開催されます。
ベルリン・フィルによる公演は、万博が開催されている大阪で七月二日、翌日に名古屋公演と一日ずつの特別公演、そして「ヴァルトビューネ河口湖2025」は七月五日から二日間の開催となります。
国内外から多くの皆様が富士山麓を目指し訪れ、豊かな自然に抱かれながら聴く世界最高峰の音楽に魅了されることとなるでしょう。
なお、本公演に先立ち、町内の小中学校の児童生徒には、公開リハーサルの鑑賞会が予定されているところであります。楽団では次世代育成のためのプロジェクトを一貫として実施していますが、このプログラムに申入れしたことにより、一足先に世界最高峰の音楽に触れる機会の創出が実現するものであります。
この貴重な財産である豊かな自然を守り後世へ引き継いでいくととともに、地域経済の活性化と文化の振興をもって、安心して生活できる環境と豊かで活力あふれ将来に希望が持てるまちづくりを目指してまいります。
次に、人口減少社会に対応した取り組みについてであります。全国的な人手不足の問題が深刻化しており、様々な業種で労働力不足による機会喪失が課題となっています。町では、一昨年前から外国人留学生と当町の企業をつなぐ就業イベント「ジョブナビ富士河口湖」を企画するなど対策を講じてまいりました。このような中、「スキマバイト」という新たな労働力が、当町の人手不足の解消の一助となり、多様な担い手確保を通じた経済活性化に繋がることを期待し、五月十六日に町、JA、商工会、観光連盟及び事業者と包括連携協定を締結したところであります。この雇用者と就業者をマッチングする事業者との協定により、今まで活用できていなかった多様な労働力が様々な業種の皆様に繋がり、町内の経済活性化に寄与できるものと期待しているところであります。
次に地域の活性化でありますが、少子高齢化の急速な進展による生産年齢人口の減少、財政規模の縮小化、社会経済環境の構造的変化が生じていく中、子育て環境の充実や移住定住施策など地域の人口維持に取り組むとともに、活力あるまちづくりを進めることが求められているところでございます。
まちづくりあるいは地域の活性化ですが、その担い手は地域に暮らす人で、人口ではなく住民であります。そこに注目されるのが、地元愛、地域への愛着といった感情が密接に関連しているものであります。
地域の活性化には、地域への愛着からその取り組みが自発的に、まず自己の地域資源を活用して行われ、そこで対応できない場合は、柔軟に地域外の資源を活用することが必要となります。
こうした中、町の有志で結成する富士山暮らし応援隊が主催となり、五月二十四日に、町民交流運動会を開催し、移住者を含む住民がスポーツを通じて楽しく交流する事業に取り組みました。
移住者と居住者の地域住民同士のつながりを深め、地域の一体感を醸成し「この町に住み続けたい」という気持ちを育むことを目的に開催したところであります。当日は、スポーツやゲームで力を合わせ汗を流した後、食生活改善推進員会のご協力をいただき、ほうとうパーティーで交流を深めました。年齢や立場を問わず、地域全体が楽しめるイベントを通して地域の連帯感を高め、多様化・複雑化する価値観を互いに認め合う機会の創出になったのではないでしょうか。
日頃のコミュニケーションは、災害時にも非常に重要であります。人間関係の構築ができているのであれば、地震など災害時に力を合わせまとまって行動できるものと考えております。
さらに移住された方々の中には、外国にルーツを持つ方も参加していただき、交流を深め、互いに多様性と国際性を意識し、他文化にふれあうきっかけづくりとなり、あらためて地域への愛着を感じていただけたところであります。まちづくりはまちぐるみで行うことで、地域の活性化につながるものと考えます。
それでは、今議会に提出いたしました議案等の主なるものの概要を申し上げます。提出案件は全部で十七件です。内訳は、「令和六年度富士河口湖町介護保険特別会計、上九一色簡易水道事業会計、下水道事業会計、温泉事業特別会計及び令和六年度一般会計」の予算繰越計算書の報告が五件、「専決処分の報告及び承認を求めることについて」の承認が二件、条例の一部改正が二件、令和七年度特別会計及び企業会計の補正予算が七件、並びに一般会計補正予算です。
そのうち、令和七年度一般会計補正予算(第一号)の概要についてご説明いたします。
今回の補正は、既定の歳入歳出予算の総額に一億九千六百七十五万九千円を追加し、歳入歳出予算の総額を百四十九億四千九百七十五万九千円とするものです。
まず、歳入の主なものについてご説明いたします。国庫支出金に一億千百十七万五千円、寄付金に二千五十万円の増額、諸収入から一千八百六十七万五千円の減額など計上いたしました。
次に、歳出の主なものをご説明いたします。
民生費は、社会福祉費に福祉制度改正に伴うシステム改修費等として五百二十一万円、物価高騰対応重点支援給付金事業として、令和六年度に実施した定額減税の調整給付金が変更となる方等への給付として一億八百五十六万円の増額を計上しました。
衛生費は、母子保健事業費に産後ケア事業実施のための施設改修費として二百五十万円。また、リサイクルセンター運営費は、勝山リサイクルセンターの整備事業費として百四十九万円を計上しました。
水産業費では、本栖湖のヒメマス釣り復活のため、レイクトラウトのフィッシングコンテストを開催する事業として、イベント実行委員会への補助金五十万円を計上しました。
商工費では、町民による「花火の歌」制作事業として二百万円、林作公園改修事業として三百二万円、大石公園トイレ整備事業設計委託費として二百七十五万円を計上しました。
教育費ではステラシアター管理費として、駐車場の整備費及び賃借料として五百四十万円の増額、イベント実行委員会補助金として一千万円、富士山河口湖音楽祭補助金として千四百六十万円を増額計上しました。また体育施設費では町民プール等の修繕費、体育施設の駐車場用地の取得費など一千三十九万円を計上しました。
以上、本定例会に上程しました令和七年度一般会計歳入歳出補正予算第一号の説明とさせていただきます。
詳細な内容や特別会計につきましては、各常任委員会において担当課長から説明をさせていただきますので、ご審議賜りますようよろしくお願い申し上げます。