令和7年9月議会 施政方針

 本日ここに、令和七年第三回富士河口湖町議会定例会の開会にあたり、今後の町政運営に対する所信の一端を申し上げさせていただくとともに、本定例会に提出いたしました案件の主なるものにつきまして、その概要をご説明申し上げ、議員各位並びに町民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げたいと存じます
 さて、本定例会は、議員各位におかれましては、任期最後の定例会となるわけであります。改めて振り返りますと、令和という時代の転換期に、世界においては、ロシアのウクライナ侵攻や中東における紛争など世界情勢の悪化、アメリカのトランプ政権の発足と拡がる自国第一主義の時流や世界を巻き込む相互関税と自由貿易の在り方など、世界経済に新たな課題が提起されているところであります。国内経済では、円安が進みバブル期以降の水準を更新し、一時は対ドル百六十円台に下落した中、日銀による円買いドル売り介入が実施され、また政策金利は、マイナス金利が解除され「金利ある世界」が戻ってきたところでもあります。
 さらに、七万人もの死者を出した、新型コロナウイルス感染症については、感染症上の分類が五類へと引き下げられ、三年余り続いたコロナ対策は、平時の体制に切り替わりました。マスク着用、三密回避などこれまでの暮らしを一変させたコロナ禍は区切りを迎えたところであります。
 翻って町では、顕著に外国人を始めとする観光客の流入が始まり、一部では観光公害といえる状況も発生したところです。急速に進む少子高齢化問題、物価高騰による影響が住民生活に直結する課題に取り組み、防災・減災対策や今なお続く新型コロナウイルス感染症への対応のほか、様々な諸課題に共に向き合ってまいりました。
 各議員には、四年間の長きにわたり町政に対して誠意あるご指導、ご協力を賜り、町の発展に力を尽くされたことに、心より感謝を申し上げます。今後も、引き続きより良い富士河口湖町のまちづくりにご尽力をいただけますようご期待を申し上げます。
 さて、いわゆる米国の新たな関税については五月から十%の関税措置が始まっているところでありますが、日本においてはその後の協議に難航しながらも八月からは十五%の相互関税が課されることになりました。三か月あまりを経て、米国の経済指標によると、関税額収入の伸びは顕著にあるものの、輸入品の総額は関税措置後も変わっていない状況から一〇%の負担は輸出事業者の負担となっていたとの見方であります。つまり事業者が努力してきた物品の値下げにより、その輸出は保たれてきたところではありますが、今後に課される関税分については、次第に商品に転嫁されるのではと思われます。
 このような米政権が打ち出す政策のそれぞれの根底にあるのは、当然と思われてきた歴史の流れ、文化や時代における共通の価値観や、目標などとしてきた自由貿易と民主主義のグローバルな拡充は一大転換期にあると評されるところであります。
 ドルを基軸通貨とした世界的な自由貿易システムにより、市場の原理で消費者の利益を優先していけば、貿易も活性化し、国際分業を推進していくことで貧しい国は富み、様々な情報が入って来るようになり国家も民主化されていくという想定がありました。
 しかしながら、このような自由貿易システムに尽くすことで、世界のサプライチェーンは拡充し、労働力の安価な国から輸入品が入ってきて、米国内の産業が空洞化し、製造業を中心として不平等感が拡大してきたところであります。自由貿易にはルールが必要であり、皆が守ってこそ健全な市場が成り立ち繁栄するところでありますが、寛容な関税や輸入の受け入れなど自由貿易の制度を擁護してきたにもかかわらず、国によっては為替操作を仕掛けるなど不公平な経済となっていて、米国の利益を損ねている実情があるとされています。
 更には、自由貿易による経済力をもって権威主義的に、国際秩序に挑戦し不安定化をもたらす危惧があり、民主化が抑制されている状況では、米国内の軍事費の負担や国際機関への拠出額も多額に負担する状況にあると指摘されているところであります。
 米政権は、関税の引上げの他に、軍事費の軽減、国際機関からの脱退、通貨政策の見直しを他国に要求してきています。米国内の雇用統計の修正やインフレ指標は、顕著ではないものの上昇基調の様相であるところですが、いよいよこの関税措置やいくつもの政策は、真実味を帯びてきているように感じるところであります。
 米国が適当と考える関税を採用するのを認めるか、もしそれが世界にとって望ましくないというのであれば、国際的な費用負担をどのようなシステムに見直すのか、日本に、国際社会に真摯に向き合うよう問題提起をしているように思われます。
 一方、歴史的にも社会経済は大転換期にあるということも、忘れてはならないところであります。これまでのモノを物質的な設備投資で生産する経済を基調としてきた構造から、サービスや知的な財産など無形な財産を生産する経済へ投資する構造に変化している時代にあるというであります。
 日本では、国際収支統計からみたサービス取引は、クラウドといった海外への支払いによるデジタル赤字が次第に膨れ上がる傾向にあります。この転換期にあって、無形な財産への投資すなわち、新たな商品やサービスの開発費、ブランド化など知的な投資や、人的資本の投資などに真剣に向き合っていく必要があると考えます。
 そして、この転換期の根底には、モノの生産拡大だけでは、人の生命の存続に絶対不可欠な自然環境も、社会生活を営むのに欠かせない人との繋がりを保つ社会環境も、持続可能としていくことが難しいとの認識があるということであります。
 このことから、町の自然環境を守り育み、未来へつなげる施策や地域コミュニティの連携や地域の連帯感を高め、多様化・複雑化する価値観を互いに認め合う取り組みを推進してまいります。
 関税はモノにかかるものでありますが、コトやトキには関税がないところにも目を向けるところであります。町内において消費されるコトやトキの創出に取り組み引き続き好調な観光需要に応えるよう施策を展開してまいりたいと存じます。
 さて、初夏の湖に香りと彩を添えるハーブの祭典ハーブフェスティバル二〇二五は六月二十一日から七月二十一日まで開催されました。今開催にあっては、八木崎公園において河口湖商工会青年部が主体となり縁日をイメージした“富士河口湖円縁まつり”を企画運営していただきました。初めての試みでありましたが、来場された方々は屋台で楽しみ、お子様連れの家族は、用意された花火やおもちゃに延々と途切れることなく列を作り、大変な盛り上がりとなりました。活況を呈している夏の富士河口湖町を住民と観光客の皆様がともに満喫する企画になったところであります。
 そして、七月五日の富士山河口湖山開きまつり花火大会は、夏の到来を告げる合図として華やかに夜空を彩り花火大会シーズンの開幕となりました。続いてコロナ禍の中、相次いで中止とされてきた、富士五湖の花火大会ですが、今年は夏の風物詩として五湖そろって完全復活することができました。ご尽力いただいた多くの関係者や大会に賛同してくださり実行委員会を盛り上げてくださいました有志の皆様、また同様に賛同のご寄付をいただきました企業の皆様、大学生ボランティアの皆さま、そして開催を待ち望んでいた住民の皆様の協力を得て開催できましたこと、この場をお借りしまして改めて御礼申し上げます。
 新たな試みとしては、本栖湖の神湖祭において、アーティストによるステージやパフォーマンスショーを企画いただきました。そして六年ぶりの開催となった精進湖の涼湖祭では、テレビドラマの撮影地にちなんだトークショーやコラボグッズの販売、地元スイーツの販売など、実行委員会の企画により行われたもので住民と観光客が一緒に楽しめる催しとしてレベルアップした花火大会となりました。現在、町役場のエントランスホールにおいてその内容が展示してございます。
 関係者による企画提案からの取り組みは、地域を盛り上げ、次回開催への布石となったものと感じています。これからもこうした事業を通じて、観光客の分散化や住民生活と観光の共生を図る取り組みを継続して行ってまいりたいと存じます。
 また、河口湖駅前の観光客の集中については、地域交通の事業者との協議において、駅の南口ロータリーの新設を要望しており、駅利用者の分散化を図るよう申し入れてございます。
 さらに、大石公園の渋滞緩和としては、地域の宗教法人との協議において、イベント時の駐車場の相互利用を申し合わせたほか、年間を通じて当法人の駐車場を貸与していただくことになりました。これからも、地域産業の育成と地域共生を探っていく施策に取り組んでまいります。
 そして夏の風物詩としてはもうひとつ、富士山河口湖音楽祭二〇二五が八月九日から二十四日まで開催され町中が音楽に包まれる十六日間でありました。
 この音楽祭に先立ちステラシアターイベントとして、七月五日、六日の両日に世界最高峰オーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による「ヴァルトビューネ河口湖二〇二五」がドイツ国外へ世界初となる引っ越し公演として、河口湖ステラシアターにおいて開催されました。国内外から多くの皆様が訪れ、豊かな自然に抱かれながら世界最高峰の音楽に魅了されるトキを過ごしていました。
 本公演の公開リハーサル鑑賞会には、町内の小中学校の児童生徒と県内の中高生が参加し、心地よい音色と技術、ハーモニーの美しさに心奪われ目を輝かせ称えあっている様子が印象的でありました。そして迎えた富士河口湖音楽祭中学生特別バンドの今年の演奏は、ベルリンからの風が吹くのを感じられたのではないでしょうか。
 音楽祭フィナーレは、特別町民で世界的指揮者佐渡裕さんの指揮で、合唱メンバーの全国公募型による第九演奏会が開催され、町民も多く参加しており、感動の中で幕を閉じたところです。
 この感動は、世界的なピアニスト辻井伸行さんと国内を代表するアーティストによる富士山河口湖ピアノフェスティバルへと続きます。辻井さんによる町内の学校訪問演奏会は今回も予定されています。ここでも世界的な演奏に触れる機会の創出が実現するものであります。
 フェスティバル期間は九月十九日から二十三日の四日間、河口湖ステラシアター、円形ホールを中心に合計九公演を予定しています。総合公園の木々や葉が風になびく自然の音や野鳥などの声と織りなすピクニック演奏会は大変好評です。ぜひ鑑賞してはいかがでしょうか。町では、この豊かな自然を守り引き継いでいくとともに、音楽や芸術文化によるツーリズムの創造により、地域経済の新たな生産性を向上させる仕組みづくりと、心豊かで活力あふれるまちづくりを目指してまいります。
 次に本町の地域医療体制についてです。
 全国にある国立大学病院の院長でつくる「国立大学病院長会議」は、昨年度の決算の速報値として、過去最大となる二百八十五億円の赤字を計上し、約七割の病院が経営困難な状況に直面しているとの内容を公表しました。物価や人件費の上昇に診療報酬が追いつかず、医療機関の持続可能性が揺らいでいる現状が明らかになったところであります。
 また、本町の中核的医療機関である山梨赤十字病院も、コロナ禍の収束に伴う患者数の減少や慢性的な看護師不足により、診療機能の維持が極めて厳しい状況にあります。
 一方で、本町は富士山と湖という世界に誇る観光資源を有し、コロナ後の観光需要は急速に回復していることから、地域住民はもちろん国内外から訪れる多くの観光客が安心して医療を受けられる体制の確保は必要不可欠であります。
 地域住民の命を守り、観光都市としての信頼を高めるため、同病院が持続的かつ安定的に機能できるよう、これまでも町として支援と協力を行ってまいりました。特に救急医療や小児医療など、地域と観光の双方を支える医療分野の再整備に力を入れ、誰もが安心して暮らし、訪れることのできるまちづくりの基盤を築いてきたところであります。この取り組みは、富士河口湖町の未来を守る重要な責務であり、地域の健康と安全、さらには観光振興にとっても不可欠なものです。
 今後も町民の皆様の声に耳を傾けながら、地域医療の充実に全力で取り組み、安心して暮らせるまちの実現を目指してまいります。
 
 
それでは、今議会に提出いたしました議案についてご説明いたします。提出案件は全部で四十六件です。内訳は、報告が二件、条例の一部改正が二件、「町道の路線廃止」と「財産の取得について」が各一件と決算認定が三十二件、補正予算が八件です。報告につきましては、「令和六年度決算に基づく財政健全化判断比率等の報告について」及び「令和七年度教育に関する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価について」です。
 次に、条例の一部改正ですが、「富士河口湖町職員の育児休暇等に関する条例等の一部を改正する条例の制定について」は、地方公務員の育児休業等に関する法律が改正されたことに伴う関係条例の改正です。「富士河口湖町立保育所条例の一部を改正する条例の制定について」は、保育所の廃止に伴い改正する条例の提案です。
 次に、令和六年度決算認定につきましては、特別会計が二十六件及び一般会計、簡易水道事業を含む水道事業会計が四件並びに下水道事業会計です。
 次に、補正予算については、特別会計三会計と一般会計及び水道事業が三件並びに下水道事業会計であります。
 そのうち、令和七年度一般会計補正予算(第三号)の概要についてご説明いたします。
 今回の補正は、既定の歳入歳出予算の総額に五億七千三百四十三万二千円を追加し、歳入歳出予算の総額を百五十五億二千八百六十九万千円とするものです。
 まず、歳入の主なものについてご説明いたします。地方交付税に五千四百五十三万円、国庫支出金に八千百六万円、寄付金に千六百万円の増額などを計上いたしました。
 次に、歳出の主なものをご説明いたします。
 総務費は、庁舎外壁工事改修工事費に千二百万円の増額、小中学校分の照明のLED化が完成するためリース料を教育費へ組み替えています。民生費は、社会福祉費に介護保険事業計画に係るニーズ調査費の繰出金として五百万円、物価高騰対応重点支援給付金事業として、令和六年度に実施した定額減税の調整給付金が変更となる方等への給付が不足する見込みであるため八千万円を増額計上しました。
 衛生費は、保健衛生総務費に山梨赤十字病院運営費補助金として八千二百十三万円。また、景観保全費は、平浜県営駐車場にごみ箱を整備する事業費として五十万円を計上しました。
 商工費では、観光費にジャズフェスティバル実行委員会補助金として百万円を計上しました。
 土木費では、道路維持費に生活道路の舗装補修工事費として二億三千九百万円を計上しました。公園費には、八木崎公園の河口湖ミューズ館東側に隣接する用地について、地権者の方々のご協力をいただくことができたため、駐車場として整備する事業費に取得費・工事費等を含め六千七百五十万円を計上しています。住宅費では、住宅リフォーム補助金に百万円の増額と山梨県からの補助を受けて行う長期優良住宅等への助成事業五百八十万円を計上しました。
 教育費では、小学校管理費として、小立小学校整備基本計画策定業務委託事業として五百三十万円、当初予算に計上した小立小学校敷地測量業務委託費の契約差金の減額を計上しました。加えて、改修したLED照明のリース料八百三十万円と西浜小学校教員住宅解体費二百三十万円などとなっています。中学校費では、LED照明のリース料三百万円などを計上しました。また、社会教育費では、町指定有形文化財「三十番神堂」の保存施設の改修に、小立財産区から費用の九割をご負担いただき一千万円あまりの事業費を計上しました。さらに、文化振興費として、企業版ふるさと納税制度を活用して、音楽のまちづくり事業実行委員会補助金として千五百万円を増額計上しました。
 
 以上、本定例会に上程しました令和七年度一般会計歳入歳出補正予算(第三号)の説明とさせていただきます。
 詳細な内容や特別会計につきましては、本会議において担当課長から説明をさせていただきますので、なにとぞご審議のうえご議決を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 

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